AOPA-JAPAN Fly In

北国の牙城
     AOPA-JAPAN ホンダ 箱崎 順之


  日本のGA環境を冬型の 気圧配置に準( なぞら)えて「西高東低だ」と言い、関東にはGA機が計器・離着陸できる空港が無いと嘆く我々を尻目に、ドイツ生まれの飛行機野郎がまた、北海道にGAパイロットの夢、マイハンガーを作ってしまったという。 
 北海道を根城とするAOPAの先達としては、別海フライトパークの小六会員、新得農道空港の志磨会員が思い浮かぶ。
 だがこのゲルマンのアビエーターは法律や慣例、「syakushi-jogi」という名の壁など、並いる障害に徒手空拳立ち向かい、ついに既存の農道空港にGAの聖地を開拓してしまったのだ。彼の情熱とパワーにはニッポンのサムライもかたなしだ。
 そんなP.ステーガー氏の元へ、物見遊山はどうかという企画が持ち上がり、AOPA会員機が10機あまりフライインを行うことになった。
 8月6日。招待された場所は北海道美唄(びばい)市にある通称美唄農道空港。富良野が北海道のヘソであるならば、美唄市はヘソの脇、ビミョーな位置にある。
 仰せ付かったマーシャラー任務のため、早めに丘珠空港を離陸した筆者は、石狩川を溯行するように飛ぶこと約10分、石狩川流域の特徴でもある無数の三日月湖の向こうに、かの地美唄農道空港が見えてきた。
 農道空港があるあたりは茶志内(チャシナイ)と呼ばれ、アイヌ語で「崖の多い川」という意味らしい。
ドイツから来た飛行機野郎は石狩川支流の大地に、故郷ライン川のローレライを思い浮かべたかも知れない。
 ステーガー氏がマイクを握るフライトサービスに導かれ、長さ800mの長い滑走路に降り立つと、そこには絵になる風景が待っていた。
 小さな管理棟のそばには、小型機2機が格納出来るという氏の所有するハンガー。中では赤い小型単発機がひっそりと乗り手を待っている。
 CABも気象台もない。だがGAはこれでいい。ここは、氏の日常と訪れる我々の非日常のまん中の世界。
美唄は紛れもなくジェネアビの天国であり、聖地なのだと感じた。
 やがて何機もの会員機が到着しだすと、ATCやプランクローズ、畑仲さんと共に忙しくメンバーを迎え入れるステーガー氏の回りで、再会し語り合うパイロットたちの笑顔がまぶしい。美唄市初のイベントに、市の職員、派出所のおまわりさん、どこの誰か分からないおじさんが石狩鍋の具のように集まってくる。
 ここがGA天国ならば、舞い降りてきた我々は天使なんじゃないかい(北海道弁で)?
 大きな目標を追いかける人には、同時に大きな優しさが溢れている。
 パイロットの夢を手に入れるまで漕ぎ着けたのは、氏のもつ運やエネルギーだけではないと感じる。だが憧れた夢を手に入れた氏も、今まだようやくスタート地点だと目を細める。
 北の大地は、これから良い季節を迎える。
 今回フライインに参加できなかった諸兄も、少し足を延ばして北北東に針路を取ってみてはどうだろうか。
 フライインに至るまで、氏に全面協力して下さった美唄市のこと、安価に泊まれる良質の温泉があること、AOPAのジンギスカン宴会が盛り上がったこと、そして、みんなが飛び立って行ってしまった後、ほんの少しの寂寥感を感じただろうステーガー氏が、また皆を待っていることなどは、誌面の関係で機会をあらためて紹介したい。

一番機はJA4128 箱崎機です。出迎えるステーガー会員。

続々と到着する会員機。

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